2009年08月12日

ニュートラル連動ヘッドライトスイッチ

vfr_hids.jpg FTM-10Sネタとは全く関係ない技術ネタ。
 僕のVFR800のヘッドライトには55WのH.I.D.を取り付けてある。極めて明るいため視認性が良くて気に入っているが、眩し過ぎるという声も無いわけではない(笑)。せめて信号待ちなどで止まっている時には消灯したいものである。しかし道交法では常時点灯が義務づけられているので不用意にヘッドライトスイッチを付けるわけにはいかない。
 で、良くやるのはニュートラルスイッチに連動させて消灯する手法である。そんな回路を作ってみた。

 ニュートラルスイッチ(Nスイッチ)に連動させると言っても、単に連動させるだけでは1速→N→2速などのNを通るシフトチェンジの時に、一瞬、Nスイッチが入ってしまう。これでは具合が悪いので、反応を遅らせるように遅延回路を構成する必要がある。
 遅延程度のロジックならPICマイコンを使ってデジタル的に処理する方法が部品点数が少なくて良さそうだが、ソフトを書いて焼き込んだりするのが面倒と言えば面倒である。完全アナログ回路で組むのでも良いが、これも何だか面倒である。で、中を取って、74シリーズのロジックICをアナログ的に利用することにした。

Eagle_HID_Delay_Sch.jpg 左は設計した回路図である。考え方は至って簡単で、抵抗器とコンデンサでRC遅延回路を構成して、コンデンサの放電時間(もしくは蓄電時間)をタイマとして利用する。ロジックICのインバータでこの電圧変化を"L"と"H"の二値に落とし込み、パワーMOS FETを駆動してヘッドライトのリレーをON/OFFしようとするものである。

 ここでヘッドライトのリレーと言っているのは、H.I.D.キットにはH.I.D.バルブをON/OFFするために利用される機械式リレーがあり、その事である。消費電流はせいぜい数100mA程度である。一方、ヘッドライトを直接制御しようとすると、55Wの場合、4A以上もの電流を制御しなければならない。これでは放熱等の熱設計をしなければならないが、機械式リレーの制御なら電流が小さくて済むので気軽に回路が組める。
Eagle_HID_Delay_Brd.jpg この程度の部品点数なら基板を起こさずユニバーサル基板で十分だが、ハンダ付けの時に何が何だか分からなくなるので、フリーでも使用できるドイツ製のEAGLE回路図エディタを使ってプリントパターンまで生成しておく。左図はそのEAGLEで作ったプリントパターンである。上記の回路図も、もちろんEAGLEに入力したものである。

 ちなみに、このEAGLE回路図エディタはWindowsだけでなく、MacOSやLinuxでも動作するのが嬉しい。特にMacOSでネイティブ動作するこの手の開発ソフトは珍しいので特筆に値する。


■回路を簡単に説明

HID_Delay_Neutral.jpg VFR800のマニュアルに載っている回路図より、Nスイッチとランプの構造を模式的に表すと左図の通りとなる。他のバイクも概ねこんなものだろう。
 図の点にエミッタAC接地のPNP型トランジスタを割り込ませて信号を得る。要するにデジタルトランジスタ(通称:デジトラ)としての使い方である。NスイッチがOFFの場合、トランジスタもOFFなのでVout点の電位はGND、つまりロジックの"L"となる。Nスイッチが入るとトランジスタがONになってエミッタ→コレクタに向かって電流が流れる。するとVout点の電位は電源電圧と同じ、つまりロジックの"H"となる。
 あとはこの"L"と"H"をゴニョゴニョすれば良い。

HID_Delay_RC_CD.jpg で、このRC遅延回路。
 ダイオードを入れてあるので蓄電は人間の時間感覚では遅延なしである。これはニュートラルから外れた場合に有効である。つまり、キアが入ったらすぐさまヘッドライト点灯させたい。
 次にニュートラルに入った時の消灯までの遅延時間、つまり放電時の時定数を決める。時間を稼ぐには抵抗値とコンデンサの容量を大きくすれば良い。大容量と言えば電解コンデンサだが、これは温度変化に弱く、また、寿命も比較的短いので、ここは固体コンデンサで行きたい。秋月電子で80円で入手できる10uFの積層セラミックコンデンサを利用することにする。
 あとは抵抗値を決めれば良い。74HCT14のデータシートによると、電源電圧5Vの時に入力が1.6V付近で出力が"L"→"H"に変化するので、1.6Vまでの放電時間Tは、T=-1×log_e(1.6V/5V)×10uF×Rとなるで、R=180kΩの時にT=2秒である。
 何となく5秒くらいあれば良さそうな気がするので、抵抗値を計算するとR=440kΩである。固定抵抗として180kΩをおさえて下限2秒を確保し、それに500kΩの半固定抵抗を加えて調整できるようにした。計算では、2秒≦T≦7.7秒の調整範囲となる。

HID_Relay.jpg 最後はヘッドライト自体のON/OFF制御である。これは前述の通り、機械式リレーのON/OFFをMOS FETを使って制御する。
 MOS FETにはP型とN型があるが、プラス側の電流吐き出しとして使うP型よりも、マイナス側で電流吸い込みに使用するN型の方が使いやすいので、ここではN型MOS FETを選択。左図はその模式図である。
 図中のVinが制御点で、ここに、ある閾値以上の電圧をかけるとFETがONになって電流が流れ、結果的にヘッドライトが点灯する。そうでなければ電流は流れないので、機械式リレーがOFFになってヘッドライトは消灯する、という仕組みである。
 流せる電流量などのパラメータはそれぞれの製品によって異なるので、制御先によって選択が異なる。機械式リレーなら前述の通り数100mA程度なので、ここでは秋葉原で簡単に入手可能で、定格2A流せる2SK2961を選択した。あと、リレー内のコイルによる逆起電力を逃がす目的で念のためフリーホイールダイオードも入れておく。



R0014575s.jpg 次はハンダ付け。部品を揃えます。
・コンデンサ:0.1uF×4(C1〜C3,C5)
・コンデンサ:10uF×1(C4)
・ダイオード:1N4002×4(D1〜D4)
・三端子レギュレータ:78L05×1(IC1)(手元にあったXC6202P502を7805の代わりに使用)
・インバータIC:74HCT14×1(IC2)
・バイポーラトランジスタ:2SA1015×1(Q1)
・N型MOS FET:2SK2961×1(Q2)(手元にあったTND012を代わりに使用)
・抵抗:18kΩ、100kΩ、180kΩ×各1(R1〜R3)
・半固定抵抗:500kΩ×1(R4)
・リード線、ユニバーサル基板、ケース(ケースは後で高さが足りない事が判明してSW-53ではなくSW-40を使用)

R0014576s.jpg 銅箔テープを使用して基板周囲にGNDパターンを作り、後は淡々とハンダ付け作業をする。EAGLE回路図エディタを使用してプリントパターンの手前まで出してあるので作業は簡単である。
 写真中のLEDは動作確認用に後から追加したものである。回路図には載っていない。
 最後に水密と絶縁のため、得意のホットボンドで空間を埋めて、完成!


 あとは取り付けるだけである。
posted by nmura at 23:59| Comment(8) | TrackBack(0) | バイク
この記事へのコメント
電子回路自作の趣味があると、自分のバイクにいろいろ回路を乗せて実動させるのはとっても楽しいですよね〜。
私の場合は、回路設計もプリントパターン設計も普通のドローソフトを使って人力で行っている(それでも以前のフル手書き/レタリング貼り付けと比べたらものすごい楽!)のですが、プリントパターン設計をしてくれるのはよいですね〜。
オートルーターとかのソフトってとっても高いイメージがありましたがフリーとは!
Posted by たーさま@ライダーの装備たち at 2009年08月17日 19:56
たーさまさま>
EAGLEは、フリーですと、扱える基板サイズや層の数に制限がかかりますが、バイク車載の用途なら全く問題ありません。もし大きなものを作りたくなったらライセンス購入すればOKです(しかも、割とリーズナブルな価格設定)。
オートルータは便利ですけど、これくらいのサイズだったら手でやった方が速いかもしれません(笑)。
Posted by えぬむら at 2009年08月18日 12:42
田原です
おひさしぶりです
なつかしーです
昔良く作ったなー発振回路CRで時定数きめて
リモコン38KHzの周波数作って赤外線受光素子を応用してロボットのリモコンも作った思い出が...

僕はオートルータはいまいち信用していないので人力ルータです。

小さく作るのではなければユニバーサルボードではなくストリップボードがお勧めです。
Posted by jxtahara at 2009年08月19日 23:34
田原さん>
なつかしーのはあれですネ、勝手に発振したり、抵抗値を間違えてトランジスタから異臭がしたり、コンデンサが爆発したりする思い出ですネ(笑)。
Posted by えぬむら at 2009年08月20日 22:34
トランジスタは良く燃やしました。TTLではパルス発生器としてCRでチョコチョコやってました。あのころはデジタルもアナログも同じ感覚でした。。
結構昔のマイコンJR100とかだとCR発信回路でクロック作っていましたので、いじってマシンをクロックアップしたりしました。爺の思い出ですね。。
Posted by jxtahara at 2009年08月21日 22:51
田原さん>
な、な、なんと、JR100ですかっ!なつかしーーー!!当時、友達の家にあってわざわざ触りに行きました。僕はマイコンなんちゅーものは買ってもらえなかったので…(笑)。
ベーシックマスター レベル3マークIIを持っている同級生も居て、こちらも触りに行きました。ハイ、爺の思い出です!
Posted by えぬむら at 2009年08月21日 23:41
田原です。
僕も持っていませんでしたが、ハム仲間のおじさんが持っていて、さわりにいっていました。
いい人だったので、「おじさんがいないときでも遊びに来ていいよ」といわれ大喜びで通ってました。

1ハムもっている方だったので僕の中ではヒーロでした。
Posted by jxtahara at 2009年08月22日 08:04
田原さん>
今と違ってマイコンは希少でしたからそれはラッキーですネ。ヒーローのおじさん、そういう人は大事だと思います。僕もそんな風になれたらなぁ…。
Posted by えぬむら at 2009年08月22日 22:28
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